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中医学には「心は神明(しんめい)を主る」…という言葉があります。

「神明」とは精神、意識、情緒のことを指します。すなわち、人の精神神経系の中枢は「心」にある…とし、心身医学の「心」と同じ意味合いをもっています。

「心」の病理について中医学では、強い精神的なストレスが長時間続いた場合、この「心」に熱が生じて、火のような状態になる…と考え、これを「心火(しんか)」と呼んでいます。

「心」のトラブルは顔面と舌に反映することが多く、「心火」があるときには、舌の先端が赤く、ひどくなると棘(どげ)状の斑点や潰瘍ができる…ということもあります。

加えて、この「心火」は「痰(病理的な水分)」とともに、色々な精神障害の原因ともなります。イライラ、不安、不眠…などの神経症の症状をはじめとして、高血圧、うつ病、精神分裂病、脳血管障害…などの疾患の多くは「心火」や「痰」が関わっていることが多い…と中医学では考えています。

こうした病態に対しては、「心」の熱を冷まし火を鎮める「清心瀉火(せいしんしゃか)」、「痰」を取り除く「化痰(かたん)」…という方法が必要です。

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「牛黄(ごおう)」という、牛の胆石を乾燥させた大変貴重な生薬には、「清心瀉火」と「化痰」の両方の作用があるとされ、これを主薬とする「牛黄清心丸(ごおうせいしんがん)」は、これらの病態に対して幅広く用いられます。

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その他に「牛黄」には、緊急の解毒、解熱、ひどい疲れ、カゼにもよく効く…ということから、水戸黄門の印籠の中に入っていた薬でもあるんだそうです。

「牛黄」を主薬とする漢方薬は高価なため、緊急性のあるときにだけ使うことが多いですが、「牛黄」は「上薬(長く飲んでも副作用がない、養命に用いるもの)」分類されているので、予防としてもいいものだと思います。