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自然界の動植物からできる「生薬」は、それぞれ特徴的な効能をもっています。

中国最古の薬学書である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には、365種の薬物を上品・中品・下品の三品に分類して記述されています。上品は無毒で長期服用が可能な養命薬、中品は毒にもなり得る養性薬、下品は毒が強く長期服用が不可能な治病薬のことを言います。

「神農(しんのう)」という人が、あらゆる草木を自ら毒味をして調べ、一説には1日に70もの毒に当たった…とも言われています。それは言い伝えですが、このことから生薬の効能は、実際に食して効能を確認するという、長い経験を積み重ねながら明らかにされたものです。

生薬…というと、植物生薬(全草、花、根、葉、茎、果実、種子、樹皮)が中心ですが、動物生薬(全体、臓器、角、殻、皮、分泌物)、鉱物生薬もあります。

生薬には「四気(しき)」と「五味(ごみ)」があります…。

「四気」は冷やすか、温めるか…。寒性、涼性、平性、温性、熱性に分類されます。

「五味」は酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩辛い)…という味の分類だけでなく、その効能も指しています。

酸味は収斂(引き締める)、固渋(固める)。苦味は瀉火・清熱(熱を取り除く)、燥湿(湿を取り除く)。甘味は滋養(補う、潤す)、中和(調和させる)。辛味は理気・活血(気・血を巡らせる)、発散(外邪を散らす)。鹹味は瀉下(下す)、軟化(しこりを解消する)。

また、生薬には効果が発揮される臓腑や経絡が決まっていて、作用範囲を「帰経(きけい)」と言います。「五味」と「帰経」の関係は深く、「酸味=肝経」「苦味=心経」「甘味=脾経」「辛味=肺経」「鹹味=腎経」に入りやすいとされています。

面白いと思うのが、生薬の作用にはその重さも関係するということ。自然の法則にも重いものは落下し、軽いものは上昇、拡散しますが、これがボクたちの体内でも同じ作用が起きている…と考えたことです。

菊花、紅花、薄荷などの「重量の軽い生薬(花、茎など)は上昇、あるいは中から外へ」。

一方の人参、牡蠣、石膏などの「重量の重い生薬(根、鉱物、貝殻など)は下降、あるいは外から内へ」。

生薬には「四気」「五味」「帰経」「昇降浮沈」という考えがあるわけです…。「四気」「五味」で病性を、「昇降浮沈」で病勢を調整し、「帰経」を介してこれらの作用を病位へと届けることで、効果を発揮すると考えます。

ただ、理解・使用するうえでの1つの視点を提供するものであって、この理論だけで薬を使用するわけではないということです。

その生薬を組み合わせて作られるのが漢方処方…ですが、複数の生薬が絡み合うことにより、相乗的に、あるいは抑制的にはたらく…というわけです。