こんにちは。

「小郡ふれあいセンター」にて山口中医薬研究会の勉強会がありました。

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今回の講師は仝(とん)先生で、テーマは「加齢黄斑変性症に対する中医学的な弁証論治」です。仝先生は「中医五官病(ごかんびょう)専門講座」を担当される先生…。ちなみに「五官」とは人間のもつ5つの感覚用器官のことで、「目」「耳」「鼻」「口」「咽喉」を指し、中国では「五官科」という、眼科と耳鼻咽喉科と口腔外科を合わせたような科があるんだそうです。

仝先生は、それ以前では「鼻のトラブル」、めまいや耳鳴りなどの「耳のトラブル」に対する中医学の対応をお話いただいていましたが、今回は加齢黄斑変性症…「目のトラブル」です。

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網膜はカメラのフィルムに相当し、外からの光が瞳(瞳孔)、レンズ(水晶体)や目の中心部(硝子体)を通り、網膜に当たり光を感じます。つまり、網膜で光が電気信号に変換され脳に伝えられ「見える」わけです…。

その中で一番重要なのが「黄斑」…。「黄斑」はものの形、大きさ、色、立体性、距離などの光の情報の大半を識別しています。網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな部分の名称で、黄斑の中心は「中心窩(ちゅうしんか)」と呼ばれ、見ているところからの光が当たる部位です。

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網膜の下には「網膜色素上皮細胞」、その下に「脈絡膜」という血管に富んだ組織があります。網膜が正しく働くためには、網膜の下にあるこれらが正しく働く必要があるわけです。

「脈絡膜」から新生血管が発生する場合、網膜の腫れ、網膜の下に液体が溜まることで黄斑の断面が変形したり障害を受けることで、物が歪んで見える「変視症」が出ます。これは例えると、凸凹の鏡で自分の姿を映したとき、歪んで見える現象と同じだそうです。

その他には「視力低下」、真ん中が見えなくなる「中心暗点」、「色素異常」などの加齢黄斑変性の症状が出てきます。

加齢黄斑変性は「滲出型」と「萎縮型」に区別されるのですが、「滲出型」は若い人に、「萎縮型」は高齢者に多く見られる…ということです。

「滲出型」は脈絡膜から血管が伸びてくる新生血管が破れて出血したり、血液中の成分が漏れ出しやすく、その水分が組織内に溜まり、網膜を押し上げることにより起こるので、「新生血管型」「ウェットタイプ」とも呼ばれます。

「萎縮型」は網膜の細胞が加齢により変性し、老廃物が溜まって栄養不足に陥り、その結果網膜色素上皮が萎縮し起こりますが、新生血管の発生はないので「非滲出型」「ドライタイプ」と呼ばれています。

この黄斑変性症…中医学的な病名は「視瞻昏渺(しせんこんみょう)」で、今から400年前の「証治準縄」に出典されているとのこと。そして「脾虚湿困」「痰瘀互結」「肝腎不足」「陰虚火旺」に分類され、それに対する治療方法も記されています。それらの処方から読み解くと、「活血」「健脾利湿」「滋陰」を中心となっています。

現代での考え方では「脾虚湿困」「痰瘀互結」は「滲出型」、「肝腎不足」「陰虚火旺」は「萎縮型」に分類できるようですが、現代医学での治療法は「硝子体内注射による薬物治療」「レーザー凝固」「手術」となります。

ただ、治療をしてもまたならない…ということではないので、安心はできないということです。

加齢黄斑変性症の発症リスクは男性が女性に比べて3倍…。これは性差もあるのかもしれませんが、タバコやお酒の習慣も大いに関係するようです。そのため、予防には「禁煙」「野菜を増やす」「日差しを防ぐ」「早く寝る」なども合わせて行うことが大切だということです。

実際、仝先生が相談された加齢黄斑変性症の方、漢方治療でかなり改善がみられているようですが、生活習慣の見直しを徹底して行ったそうです。

今回の仝先生の講義で、加齢黄斑変性症への理解と、中医学的な対応、生活習慣のチェック…など、大事なポイントをお話しくださいました。

仝先生、ありがとうございました。