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中医学の診断法の1つに「臓腑弁証」と呼ばれる診断法があります。

これは、内臓の状態から病気や不調の原因を探し出すもので、五臓六腑について弁証(病気を判断する)を行います。

中医学で考えている五臓六腑は、現代医学とは異なり、個々の臓器を指すのではなく、呼吸や血液循環、新陳代謝などの生理機能も含んだ、生命を維持するシステム全体を指しています。そして、各臓器や器官は互いに影響し合い、それぞれの働きを助けたり、抑制したりしながら全体のバランスを保っていると考えています。

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●「肝」の生理機能
血液の貯蔵機能や血液量の調節機能の他、新陳代謝、情緒の安定、各器官の機能調節、胆汁の分泌などの機能があると考えています。中枢神経系・自律神経系・循環器系などの作用を併せもち、「肝」の働きが低下すると不眠やイライラなどの症状があらわれます。また、「肝」は目と特に密接な関係があるため、視力低下や眼精疲労などの目の症状には「肝」の弁証が行われます。

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●「心」の生理機能
心臓の循環機能(血液循環)だけでなく、大脳皮質における精神活動や自律神経系の機能も含んでいます。「心」の生理機能である気血の流通が精神状態と密接な関係を持っていることから、精神・意識・思考なども「心」の働きと捉えています。また、舌👅には血管が密集していることから、「心」の不調は舌にあらわれる…と考えられます。

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●「脾」の生理機能
主に飲食物の消化・吸収などの消化器系の機能を主っています。血管を保護する役割もあり、血尿や皮下出血など、血液が血管の外に出ないように統率するほか、内臓下垂などを防ぐ昇清作用などもあります。また、「脾」の機能が低下すると味覚異常や口内炎など、口に症状があらわれやすいと考えられています。

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●「肺」の生理機能
現代機能でいう呼吸器系の機能だけでなく、発汗や毛穴の開閉などによる体温調節機能や体液代謝機能、気血の運行、ウイルスなどの侵入を防ぐ免疫機能の一部を担っています。中医学では、呼吸器系以外に、皮膚や鼻、のど、気管支などの働きも含まれています。また、鼻やのどは空気の通り道であることから、肺の不調は鼻やのどにあらわれやすいと考えられています。

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●「腎」の生理機能
生命エネルギーの貯蔵庫と考えられています。生殖機能、ホルモン系、中枢神経系、造血系などの機能を含み、全身の成長と発育、排卵や月経などの生殖機能をもっているため、慢性病や更年期障害、不妊などの疾患は「腎」の弁証が行われます。聴力は「腎」と関係があり、「腎」の働きが弱くなると耳鳴りなどの症状があらわれます。

「臓腑弁証」は、五臓の生理機能をもとに、病気や不調の原因を探し出す弁証法です。