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中医学では、花粉やハウスダスト、細菌やウイルス、有害な化学物質、高低温や湿度、乾燥などの病気を引き起こす「外邪」から体を守るバリアの役目を果たすのが「衛気(えき)」と呼ばれる「気(エネルギー)」の一種の働きと考えています。

元気や気力…といった言葉があるように、体の中を流れている「気」には様々な種類があるのですが、「衛気」は皮膚や気管支、鼻などの「第一防衛ライン」である体表部をくまなく巡り、粘膜細胞を強化して防衛力を高め、バリアを張り巡らす働きがあります。

アレルギー疾患だけでなく、カゼや慢性疲労、冷え症、肌荒れなども、中医学で考えると根本的な原因は同じ…この「第一防衛ライン」である「衛気」のチカラが不足していることが原因だと考えています。

ストレスや睡眠不足、偏食など、「気」を消耗する生活を続けていると、防衛力が低下し、カゼを引きやすくなったり、疲れやすくなったりします。「外邪」に負けない元気な体を作るには、「衛気」のチカラを強めてあげることが大切だと考えます。

「衛気」のチカラを強めてあげるには、「肺」「脾」「腎」の3つの機能を高めることがポイント…。この場合、「肺」「脾」「腎」は単なる臓器を指すのではなく、呼吸器系、消化器系、免疫系などの働きも含まれています。

中医学では、体を元気にする生薬を「補気薬(ほきやく)」と言いますが、その中で2大補気薬と呼ばれているのが「朝鮮人参」と「黄耆’(おうぎ)」です。

「朝鮮人参」は体内から元気をつけますが、「黄耆」は体表部や粘膜を強化し、免疫力を調整する働きがあります。

ですから、「黄耆」は「衛気」のチカラを強めるので、外的刺激に弱い肌や粘膜を健康に保ちたいときに適しています。しかも、ただ免疫力を高めるのではなく、体の状態に応じて免疫の過剰反応を抑えるバランスを保つ働きも兼ね備えています。

そんな「衛気」を補う「黄耆」を中心に、消化機能を高める「白朮(びゃくじゅつ)」、カゼの侵入を防ぐ「防風(ぼうふう)」などを組み合わせた代表的な処方が「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」です。体の表面に屏風を立てて、外からの邪気を防ぐ効果があるというのが名前の由来で、日本では「衛益顆粒(えいきかりゅう)」として知られています。

中医学の考え方に「異病同治(いびょうどうち)」というものがありますが、「衛気」の不足から起こる、原因が同じ場合の病気に対して、これらの処方は有用であると考えられます。