こんにちは。

中医皮膚病IP講座の2017年度スクーリングの「ステロイドと中成薬」、中医師の楊達(ようたつ)先生によるお話です。

ステロイド外用剤は、アトピー性皮膚炎の治療の「薬物療法」として位置づけられていて、面積や発疹のタイプにより重症度を判断し、使用されています。

全体的に赤みがある「重度」の場合、ベリーストロング(5段階中4)ないしストロンゲストクラス(5段階中5)が選択されるようですし、キズのところだけ赤い「中等度」の場合は、ストロング(5段階中3)ないしミディアムクラス(5段階中2)が第一選択されるようです。

また「部位」によって経皮吸収量が違い、前腕(内側)を「1」とすると、吸収力は上から、頭皮「3.5」、額「6.5」、頬「13.0」、あご「6.0」、背中「1.7」、脇の下「3.6」、前腕(外側)「1.1」、手のひら「0.83」、陰のう「42.0」、足首「0.42」、足の裏「0.14」…。

そのため、首から上に使用するステロイド外用剤は、体に使用するステロイド外用剤よりもランクの低いものが選択されます。

使用する目安として、大人の人差し指の第一関節までの量(0.5g)で大人の手のひら2つ分。これを「ワンフィンガーチップユニット(1FTU)」と言います…。

塗り方には「単純塗布」と、2種類を重ね塗る「重層法」があります。

ステロイド外用剤を使用されている場合、見た目は皮膚症状が軽微に見えます。ステロイド外用剤を使用している皮膚の状態に中成薬(中国漢方)で対応する場合、隠れている炎症は強い…と判断して、処方を選択する必要があります。

脱ステロイドには、ステロイド外用剤を完全に中止する方法と、徐々に減量していく方法がありますが、リバウンドなど日常生活における負担を考慮し、徐々に減量していく方法を選択していく方がいいのでは…と先生はおっしゃっていました。

その場合、しっかりと炎症を抑える漢方薬を服用しながら、ステロイド外用剤を減量していく。面から点での使用、毎日から2~3日に1回の使用に…。先生は、1週間に1回の使用でコントロールすることができるのであれば、一度中止してみることを提案されました。もちろん程度にもよりますが、上手くいけば早くて半年で抜け出せることも可能だと言われます。

アトピー性皮膚炎のもとは「ドライスキン」と「皮膚のバリア機能が弱いこと」なので、炎症のある皮膚症状は根本ではないわけです。炎症が終わったから終了…というのではなく、再発させないかがポイントになります。そのため、ステロイド外用剤を止めても、本治(補剤)の漢方薬やスキンケアは続ける必要があります。

今回、先生は「タクロリムス」についてもお話されました。「タクロリムス」はご存知の通り、ステロイド外用剤の代わりとして使われていて、「プロトピック」という名前で処方されています。ステロイド外用剤で副作用が出やすい顔、頚の発疹に対して使用されます。分子量が800と大きいため、正常な皮膚には入って行きにくく、維持療法として適している…とも言われています。

それでも「タクロリムス」は免疫抑制剤…。小児や妊婦への使用は禁止されていますし、強い紫外線を浴びると皮膚ガンのリスクが上がる…と言われているし、不明な点もまだ多いの薬です。

今回、ステロイド外用剤を使用している場合の漢方薬での対応、「タクロリムス」についての認識など、充実した内容でした。

楊先生、ありがとうございました。