こんにちは。

足腰の衰え、疲労感、認知機能の低下…。単なる「老化現象」とされたこうした症状を「フレイル」と呼んでいます。

「加齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態」のこと…健康な状態から要介護状態への「移行段階」とされています。英語で「虚弱」を意味する「Frailty」に対応する概念として、日本老年医学会が2014年5月に「フレイル」と提唱されました。

①自然に体重が減った(半年で2~3kg)②わけもなく疲れる③筋力が落ちた(重いものを持つのが大変)④活動量が減った(あまり出かけなくなった)…3つ以上当てはまれば「フレイル」の可能性があります。

「フレイル」には身体的フレイル(筋力の低下や体重減少)、精神的フレイル(うつや認知機能の低下)、社会的フレイル(孤独や閉じこもり)の3つの要素があるようですが、中でも注意したいのは体と心の活動の低下です。

中医学で考えると、老化による症状を「虚労」だと考えられます。「虚労」は、臓器の虚弱や身体に必要な要素(気・血・水・精)の不足により、心身の働きが衰えた状態のこと…。

-肝-
「肝」は「気」の流れをスムーズに保ち、ストレスを発散させる臓器。「肝」の機能が衰えるとストレスを上手く処理できず、精神トラブルを招きがちになります。「肝」は目と関係が深く、視力が減退して眼精疲労を訴えるようになりますし、老眼にもなります。

-心-
「心」は「血」を全身に巡らせ、精神をコントロールする臓器。「心」が衰えるとき「心は血脈を司る」ので、脈の問題が出てきます。不整脈が出たり、血圧や脈管の問題が出やすくなります。「心」は精神活動を行うので、記憶力が落ちたり、脳の働きが鈍くなり、不眠にもなりやすくなります。

-脾-
「脾」は食事の栄養から「気」を生み出す臓器。その機能が衰えると、栄養不足で全身の臓器の働きが低下し、体力も落ちてしまいます。また「脾」が虚弱になると、「脾は筋肉を司る」ので、痩せたり、筋肉の弾力がなくなります。中医学では「脾は後天の本」と言われ、元気で長生きするために大切にしなければならない…臓器です。

-肺-
「肺」は体内の「気」をコントロールする臓器で、体の免疫力とも深い関わりがあります。そのため、「肺」の機能が衰えると、体のエネルギー不足や免疫力の低下を招くことに…。若い人に比べてカゼを引きやすく、咳が出やすく、肺炎に罹りやすくなります。もちろん「肺」は呼吸を司る臓器なので、機能が衰えると息切れ、ちょっと動くと「ハーハー」する、階段の昇り降りが辛くなる…ということも。また「肺」は皮膚を司りますが、皮膚掻痒症などの老人性の皮膚トラブルを起こしやすくなります。

-腎-
「腎」は生命力の源「精」を蓄える臓器。そのため、「腎」の機能が衰えると生命力の低下につながります。「腎は耳に開竅する」ので虚弱になると聴力の低下、耳鳴りが出やすくなります。また「腎の華は髪」なので、髪の毛が白くなったり、抜けやすくなったり、細くなったりします。「腎」は脳や骨とも関係が深く、物忘れが多くなる、骨や歯が弱くなる、骨粗鬆症、腰痛などがあらわれたりします。

西洋医学では「フレイル」は早期の発見、適切な対処で改善できる、健康な状態に戻れる…ということが分かってきました。

中医学でも、不足した要素を補うことで、心身ともに健やかな状態を取り戻せると考えます。

それにはもちろん、「食事」や「運動」など暮らしの養生は欠かせません。