こんにちは。

先月ですが、「小郡ふれあいセンター」にて山口中医薬研究会の勉強会がありました。

今回の講師は劉伶(りゅうれい)先生で、テーマは「症例から学ぶ弁証論治」でした。

「弁証」とは、病態(証)を診断すること。

「弁証」には「八綱弁証」「気血弁証」「衛気営血弁証」「六経弁証」「臓腑弁証」など様々角度から分析する方法があり、それをもって体の中で何が起こっているのか診ていくわけです。

「症」と「証」の違いについて

「症」とは頭痛・咳などのように、疾病において出現する「具体的な症候」を指し、症状とも言いいます。一方の「証」とは疾病に現れる多くの症状を統合したもの、もしくは疾病の病因・病位・性質・正邪の盛衰を概括したもの。

例えば、悪寒、ゾクゾク冷える、鼻水、無汗、舌苔薄白、脈は浮緊…の症状がある場合、悪寒ゾクゾク冷える、鼻水は「寒証」、鼻水、無汗、舌苔薄白、脈は浮緊は「実証」と捉えます。「証」をつかむと、その「証」に対する対応が決まってきます。

これが「弁証論治」という方法です。

中医学の知識の活用(引火帰元)

体のエネルギーである「相火」は、下半身で燃えている体の大本(おおもと)のエネルギー。

更年期の女性に見られる「冷えのぼせ」「ホットフラッシュ」「汗が出る」などの症状は、体の潤している「陰血」が不足していることで、「相火」が上に上がることで、起こると考えます。この「相火」は大切なエネルギーで、もとに戻さなければいけないという考えが「引火帰元」です。「参茸補血丸」にはのぼせ、ホットフラッシュ、汗の量を落ち着かせる働きがあるのだとか。

症例の紹介

劉伶先生は5~6つの症例を紹介、先生の考え方と一緒に説明されました。先生は不妊症の相談を得意とされているので、子宝相談の症例、または皮膚病の症例が多かったです。

【背中全体に乾癬様の湿疹】28歳男性 

もともとアトピーがあり、漢方薬局で相談されていた方。小康状態を保っていたが、仕事のストレス、食生活の乱れ、睡眠不足が重なり悪化。背中全体に乾癬様の湿疹、熱感と痒みが強い。痒みで眠れない。1ヶ月近く対応しているが改善がみられないため、漢方薬局が劉伶先生に相談。

かなり悪化している状態。湿疹の状態を診て、劉伶先生は「風熱+血熱」(風熱が主)と弁証。「防風通聖散」+「天津感冒片」を中心とした処方で対応し、10日ほどで腫れ、痒み、赤みがかなり改善されてきたのだとか。

「風熱」はブツブツの発疹(皮膚が盛り上がっている)、「血熱」は皮膚の発熱があり、全体的に赤く盛り上がりがない深い熱。先生は、ブツブツの発疹は「表面にある熱を皮膚から発散して出す方が早い」と考え、漢方薬局の処方を変更され、かなり早く改善へ。その後しばらく続けられ、1ヶ月半で完全に良くなられたとか。

この症例から「適切な対応をすれば効果が早い…」ということを教えていただきました。ただし、湿疹でも「風熱」のタイプは比較的早く改善するが、アトピーは複雑なので、時間はかかるとおっしゃってました。急性と慢性で対応も違うわけだし、石膏や黄柏などの苦寒剤を続けることは、陰を消耗させるので細やかな対応が求められるのだろうと思います。

学習の座右の銘

資料の中に、先生の「学習座右銘」がありました。子思(紀元前483年頃-紀元前402年頃)、中国戦国時代の儒学者で「中庸」の著者。その「中庸」の中の言葉のようです。

  • 愽学之:愽(ひろ)く中西医学知識を学び
  • 審問之:審(つまび)らかに問診
  • 慎思之:慎(つつし)みて病因病機を思考
  • 明弁之:明らかに証を弁明
  • 篤行之:篤(あつ)く我が医道に行く

【礼記・中庸】 子思 著作

子宝相談の症例には最新の西洋医学、皮膚病の症例には古典から、たくさんの引き出しがあり、その幅広い知識があってのこれら症例。先生の深い考察を聴かせていただき、たくさん勉強させていただきました。ありがとうございました。