こんにちは。

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中医学で「腎(じん)」は、命門(めいもん)と言われ、昔から老化と最も関係の深い場所とされています。

「腎」は体のコントローラーとして、五臓六腑のはたらきを調整していて、生命のエネルギー源として中心的な役割をしている大切な臓器です。

ボクたちの体を木にたとえると、「腎」は根の役目。土の中に入り込んで大木を支えている根です。そして、実は老化は根から始まります。

大切な「腎」の機能が衰えて老化が進むことを、中医学では「腎虚(じんきょ)」と呼びます。

「腎虚」の症状としては「足腰の弱り」「視力減退」「脱毛」「歯の弱り」「精力減退」「物忘れ」「小便が近い」「小便の勢いがなく、スムーズに出ない」…といった老化の症状です。

中医学では、「腎虚」にも色々なタイプがあると考えます。

まず、大きく分けて「陽虚(冷えタイプ)」と「陰虚(ほてりタイプ)」が考えられます。

「冷えタイプ」としては、Aエネルギー不足型の「腎陽虚(じんようきょ)型」あげられます。

一方、「ほてりタイプ」は、B潤い欠乏型の「肺腎陰虚(はいじんいんきょ)」型」、C感覚調整低下型の「肝腎陰虚(かんじんいんきょ)型」、D脳神経の衰え型の「心腎陰虚(しんじんいんきょ)型」、E抑制系の衰え型の「陰虚火旺(いんきょかおう)型」に分けられます。

A「腎陽虚(エネルギー不足)型」は、エネルギーを作り出すはたらきが衰えているタイプです。だから、寒がりで、手足も冷えやすく、体もだるくなりやすい…。精神的に弱くなりやすく、やる気や根気がなくなってくる…ことも。また、熱エネルギーは筋肉で生まれますが、このタイプでは膝、腰、膀胱、生殖器、肛門など筋肉の関係するところに衰えを自覚する方が多いです。

おススメ漢方は、「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」「八味地黄丸(はちみじおうがん)」「至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)」「独歩顆粒(どっぽかりゅう)」など。

B「肺腎陰虚(潤い欠乏)型」は、畑に水がないタイプです。いくら水を飲んでも、全身に水分が行き渡らないので、口が渇き、セキ、皮膚のカサつき、口内炎、硬い大便…などの症状となってあらわれます。特に、このタイプは全身に水を散布する「肺」が乾くので、セキが出やすいです。

おススメ漢方は、「八仙丸(はっせんがん)」「麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)」など。

C「肝腎陰虚(感覚調整低下)型」は、「肝」の支配する目に十分なエネルギーが補給できないために、特に目に症状が出やすいのが特徴です。目が乾く、疲れる、見えにくい…など。その他、ふらつき、めまいや耳鳴りを起こしやすく、このタイプは血圧が上がりやすいので注意が必要です。

おススメ漢方は、「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」「耳鳴丸(じめいがん)」など。

D「心腎陰虚(脳神経の衰え)型」は、脳神経の衰えがあらわれているタイプ。脳の中はいくつかの階層があり、どこの階が衰えているかで症状が違ってきます。眠れない、よく目が覚める、動悸などは下の階…、不安、イライラは中の階…、物忘れや感情が乏しくなるのはもっと上の階…。

おススメ漢方は、「天王補心丹(てんのうほしんたん)」「牛黄清心丸(ごおうししんがん)」など。

E「陰虚火旺(抑制系の衰え)型」は、いわゆる機能亢進しやすい人です。車のブレーキが効かずに暴走するのに似ています。体の中で熱が発生しやすく、そのためカーッと熱くなったり、手足がほてったり、寝つきが悪くなったり、やせたり…。過剰の熱によって体の水分が失われ、唾や涙が出なくなることも。

おススメ漢方は、「瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)」「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」「降圧丸(こうあつがん)」など。

加えて、「腎虚」とともに老化の鍵を握るのが「瘀血(おけつ)」です。血液がドロドロになり、固まってくる…。特に、脳や心臓などで詰まりやすくなります。また、老化によって血行が悪くなると血管がもろくなり、老人性紫斑(青あざ)ができやすくなったり。

おススメ漢方は、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」「血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)」など。

薬と言えば、病気を治すもの…という考え方ですが、薬の中には健康な人こそのむと良いものがあります。

「丈夫で長生きするための漢方薬」は、病気を治すのが目的…というわけではなく、老化防止と病気の予防を目的としています。その代表的ともいえるのが、「補腎薬(ほじんやく)」でしょう。なので、「補腎薬」は根気よくのみ続けるのが大事です。