こんにちは。

先日の東京で開催された、中医皮膚病IP通信講座「10周年記念」のスクーリング。前半が日本歯科大学医学部門皮膚科学教授の「山口全一先生」の講演で、雲南中医薬大学第一附属病院副院長の「葉建州先生」の講演でした。

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山口全一先生は、日本の皮膚科の専門家の中で、皮膚病治療にいち早く漢方を取り入れた数少ない西洋医のうちの1人。ボクたち薬局の中医皮膚病治療に対して理解していただいている先生です。先生は、漢方でも日本漢方の先生です。

講演のタイトルは「アトピー性皮膚炎の治療~その進化と副腎皮質ホルモン剤の副作用を含めて~」。

今回のお話の内容は、アトピー性皮膚炎の治療に対する「西洋医学」での診断と分類、治療法と外用や内服を含めた薬の選択、合併症についてでした。

局所ではステロイド剤などの外用が中心で、全身になると抗アレルギー剤などの内服薬が中心に。症状に合わせて、それに合ったランクのものを使い分ける…ということです。ガイドラインに沿ってのお話でした。

内服の場合、抗アレルギー剤で効果が無ければステロイド剤や免疫抑制剤が使われていきます。その中で漢方薬は、急性期には「局所の証」を、慢性期には「全身の証」を優先しながら、西洋薬との併用しての治療となるそうです。

漢方薬は、「実と虚」「寒と熱」で判断して選択されるようです。中医学とは少し違う分類方法でしたが、これは日本漢方の考え方に基づいているようです。

ボク個人としては、中医学の方が柔軟な考えによって漢方治療が行える…そのように感じました。

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葉建州先生(右)は、長い間中国臨床研修で、外来や講義の指導をして下さり、大変お世話になっている先生です。葉先生が副院長を務める「雲南中医薬大学第一附属病院」は、毎年100万人以上の外来患者が来られる大きな病院。葉先生は、その他「雲南省中医学皮膚科専門委員会会長」「中西医結合学会雲南省分会副会長」「皮膚病性病雑誌の副編集長」などを同時に担われています。ご多忙中の中、今回の講演にご協力をいただけることとなりました。通訳は楊達先生(左)がされました。

講演のタイトルは「湿疹・アトピー性皮膚炎の三段階的中医治療」です。

中国でも、生活環境の大きな変化により、アトピー性皮膚炎は増えてきているようです。雲南中医薬大学第一附属病院では、アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚科全体の3~5%くらいではないか…ということです。

中医学では症状により「急性湿疹」「亜急性湿疹」「慢性湿疹」の三段階に分けて考えます。

急性湿疹は、丘疹(ドーム状のもり上がり)、漿液性丘疹(中心がジクジク)がよく見られ、滲出傾向が強く「湿熱(しつねつ)型」が多いのが特徴。

亜急性湿疹は、丘疹、痂皮(かさぶた)、鱗屑(フケのように角質が落ちる状態)がよく見られ、「脾虚内湿(ひきょないしつ)型」が多いのが特徴。

慢性湿疹は、苔癬化病変(ゴワゴワした厚い皮膚)が多く、繰り返し発症し、「陰虚血燥(いんきょけっそう)型」「血虚風燥(けっきょふうそう)型」が多いのが特徴。

先生は、湿疹の弁証を8つに分類し、それに対して先生がよく処方される漢方薬を紹介されました。残念ながら、その病院のオリジナル処方だったり、日本にない処方だったりで、同じ処方はありません。しかし、治療の方向性が分かれば、処方を組み合わせることで近いものにすることは可能です。加えて、治療に必要なポイントもいくつか教えていただきました。

乳児や小児の場合の対応も。外用剤以外にも、乳児の場合はお母さんの母乳を通してのませる…という方法があります。お母さんにのんでいただくんですが、ウチでもその方法をとって上手くいったケースもあります。

最後に治療についての問題点も…。アトピー性皮膚炎の再発率は80%なんだそうです。つまり、油断は禁物…ということです。また、痒みを上手くコントロールすることが大切で、いかに掻かないようにするか…ということが難しいです。また多くの場合、乾皮症を伴うので、保湿の強化とともに刺激を避けることが必要となります。つまり、スキンケアや養生がいかに大切か…ということでした。

今回、この2人の先生による西洋医学、中医学から見たアトピー性皮膚炎のお話は、とても内容の濃いものでした。店頭で役立てられるように、しっかり整理しなければ…と思いました。